2021年度 インフラメンテナンス賞の発表
インフラメンテナンス プロジェクト賞
応募いただいたプロジェクトの中から、インフラメンテナンスにより特に地域のインフラの機能維持・向上に顕著な貢献をなし、地域社会の社会・経済・生活の改善に寄与したと認められるプロジェクトを選考し、以下の通り、「インフラメンテナンス プロジェクト賞」として表彰することとした。
① 地域発の「道守養成ユニットの会」の活動 (プロジェクト主体者:道守養成ユニットの会) 長崎発道守の認定者からなる「道守養成ユニットの会」は島嶼が多い地域特性を踏まえ、地域部会を拠点として、ボランティア活動、自己研鑽、技術支援等を県内産官学の連携をもとに創意工夫しながら取り組んでいる。 |
② 大阪府における都市基盤施設のインフラメンテナンスプロジェクト (プロジェクト主体者:大阪府) 効率的・効果的な都市基盤施設の維持管理を推進するとともに、市町村や大学などと連携を強化する仕組みを構築して、地域全体の都市基盤施設を良好な状態に保ち、地域社会の安全安心に寄与するものである。 |
③ 道路アセットマネジメントプラットフォーム (プロジェクト主体者:(独)国際協力機構) JICAは道路アセットマネジメントプラットフォームを設立し、開発途上国において需要が高まっている道路・橋梁のアセットマネジメントの効率的な支援、国内技術の海外展開支援、途上国の中核人材育成を実施している。 |
④ 若戸大橋大規模修繕 (プロジェクト主体者:北九州市道路公社) 1962年建設の若戸大橋(吊橋)は北九州の基幹インフラとして地域を支え、今年で60周年を迎える。本プロジェクトでは長寿命化を目的に2012年に主ケーブル健全度調査や部材取替、2017年には補剛桁鋼床版連続化等を実施した。 |
⑤ 森村橋復原工事 (プロジェクト主体者:小山町) 森村橋は明治39年に建設されたトラス橋で近代産業遺産として国の文化財に登録されている。旧鋼材(ドイツ製)の再利用や当時の姿を残しつつ歴史的価値を維持し、地域社会での活用を目的に歩道橋として復原した。 |
⑥ スマートメンテナンスハイウェイ(SMH) (プロジェクト主体者:東日本高速道路(株)) NEXCO東日本では、高速道路の長期的な「安全・安心」の確保のために、ICTやロボティクスなどを活用し、アセットマネジメントにおける生産性を飛躍的に向上するためのプロジェクト、SMHに取り組んでいる。 |
⑦ 東京国際空港D滑走路維持管理 (プロジェクト主体者:国土交通省 関東地方整備局 東京空港整備事務所、羽田再拡張D滑走路維持管理工事共同企業体) 本件は、埋立・桟橋ハイブリッド構造による羽田空港D滑走路の維持管理である。予防保全概念や維持管理実績に基づく技術検証を通じた維持管理計画の定期的見直し等を導入し、100年にわたる安定的供用を図っている。 |
⑧ スエズ運河橋 維持補修プロジェクト (プロジェクト主体者:エジプト国建設省、(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル) エジプト本土とシナイ半島を結ぶ重要な路線である、スエズ運河橋は、開通8年後に塩害による多大なる上下部損傷が確認された。エジプト政府の要請を受け、2012~2016年に下部工・舗装、鋼床版の補修工事が実施された。 |
⑨ 銀座線リニューアルプロジェクト (プロジェクト主体者:東京地下鉄(株)) 本プロジェクトは、「伝統×先端の融合」をコンセプトとし、銀座線全駅のリニューアル、ホームドア・バリアフリー設備の整備や新型車両の導入により、お客様に新しい価値を提供している。 |
⑩ 国道2号淀川大橋床版取替他工事 (プロジェクト主体者:国土交通省 近畿地方整備局) 阪神間交通を支え続ける国道2号の淀川大橋において、建設後90年経過した老朽部材の更新及び耐震性向上を目的に国交省初のECI契約方式にて床版取替(RC床版から鋼床版へ)等の大規模更新を行い、長寿命化を実現した。 |
⑪ 東京都における下水道の再構築への取組と成果 ~アセットマネジメント手法やデジタル技術を活用したインフラメンテナンス~ (プロジェクト主体者:東京都 下水道局、東京都下水道サービス(株)) 東京都下水道局では、台帳情報システム(SEMIS)を用いて膨大なストックを効率的に維持管理。さらに、アセットマネジメント手法を活用して、老朽化した下水道管を計画的に再構築し、道路陥没を大幅に削減。 |
⑫ 首都高速1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業(Ⅰ期) (プロジェクト主体者:首都高速道路(株)、大林・清水・三井住友・東亜・青木あすなろ・川田・東骨・MMB・宮地高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新異工種建設工事共同企業体) 過酷な使用や厳しい腐食環境により損傷が多数発生していた道路構造物の更新を、狭隘な施工エリアの中で交通を切替えながら工程短縮に努め、現場着手後4 年余りで新設構造に交通を切り替えた非常に難易度の高い事業。 |
⑬ 市民生活を支えて100年、文化遺産の水道インフラをメンテナンスでさらに100年 (プロジェクト主体者:松江市 上下水道局、(一財)ダム技術センター、中電技術コンサルタント(株)、(株)大林組) 建設後100年を迎えた千本ダムを、国内初のダム用PSアンカー技術により、水道供給継続と歴史的価値を保ちつつ、低コスト・短工期で耐震補強、改修し、安全性・耐久性を向上させ、新たなメンテナンス手法も確立した。 |
⑭ ENEOS(株) KS-1海底パイプライン・リフレッシュ工事 (プロジェクト主体者:ENEOS(株)(当時は東燃)) 本事業は、海底配管更新工事において、既設管を活用する「海底パイプライン・リフレッシュ工法」の開発・採用により、既存インフラの機能維持・向上に顕著な貢献をなし、新たな海底配管更生技術の実現を達成した。 |
⑮ 横浜市営地下鉄関内駅リニューアルプロジェクト (プロジェクト主体者:横浜市 交通局、(株)奥村組) 本件は、塩害により劣化した横浜市営地下鉄関内駅のリニューアル工事である。ライフサイクルコストを低減する工法で、作業時間の短い線閉作業を安全かつ効率的に、長寿命化を確実に進めていく必要があった。 |
インフラメンテナンス チャレンジ賞
応募いただいた取り組みの中から、点検・診断、設計、施工・マネジメント等の個別または組合せ技術を駆使し、特に地域のインフラメンテナンスに寄与したもの、あるいは、創意工夫によりインフラメンテナンスに対する管理者、市民等ステークホルダーの意識の向上が認められた取り組みを選考し、以下の通り、「インフラメンテナンス チャレンジ賞」として表彰することとした。
① ウシワカ~鉄人たちの橋の再生物語~ (取り組み主体者:ウシワカ製作委員会) 本取組は、映像を通じ、橋梁保全の大切さとそれに様々な形で携わる人たちの熱い思いを広く世の中にアピールし、国土強靭化への理解・協力と若年層への技術の伝承、建設業界の持続的発展を目的としたものである。 |
② 橋梁補修DIYによる持続可能なメンテナンスへの挑戦 (取り組み主体者:玉名市) 玉名市役所では、橋梁補修の直営施工(『橋梁補修DIY』)によるOJTを実践することで、橋梁管理者が自らの橋梁に対し、“愛着”と“気づき”を実体験するとともに、得られた知見を次の世代に繋げる挑戦を続けている。 |
③ TC型省力化軌道におけるあとてん充工法による路盤改良の実践 (取り組み主体者:東日本旅客鉄道(株) JR東日本研究開発センター テクニカルセンター) 軟弱路盤上に敷設されたTC型省力化軌道における、軌道変位発生の主要因を解消する方法として、てん充層下の路盤改良を目的とした「あとてん充工法」を営業線で施工し、営業線条件下での基本性能について確認した。 |
④ 水中点検ロボット ディアグ®開発プロジェクト (取り組み主体者:(株)大林組) 当社独自技術であるジャイロ効果を利用した姿勢制御装置「アクアジャスター®」を搭載した水中点検ロボット「ディアグ®」の開発により、作業をより安全に、大深度かつ広域にわたって調査・点検出来るようになった。 |
⑤ 阪神高速COSMOSを用いた維持管理情報などの連携 (取り組み主体者:阪神高速道路(株)) 複数の業務支援システムで管理している点検・保守管理に関連する情報を、GISを用いて連携させることで、地図上から各情報へのアクセス及び管理情報や損傷情報の重ね合わせを可能とし、業務効率化・高度化を実現した。 |
⑥ 市民協働と人材育成を両輪とした「橋のセルフメンテナンスモデル」の構築と展開 (取り組み主体者:日本大学工学部土木工学科構造・道路工学研究室、(株)アイ・エス・エス) 市民や学生らが主体となり地域の橋の簡易点検や清掃活動を行う市民協働の取組みである「橋のセルフメンテナンス」と、子どもたちや市民を対象に自発的に橋のセルフメンテナンスに取組める人材の育成を行っています。 |
⑦ 産官学で取り組む『岡山道路パトロール隊』 (取り組み主体者:岡山道路パトロール隊) 土木科高校生が、近隣の国道管理者国土交通省、維持業者の協力を得て行う、道路の異常を発見報告する社会インフラメンテナンス活動。身近なICT機器スマホを活用しパトロールを実施、道路維持管理の一助を担っている。 |
⑧ 耐硫酸性をもつコンクリートによる排水処理施設のメンテナンスフリーへの貢献 (取り組み主体者:大成建設(株)、宇部興産(株)) 硫酸で劣化した排水処理槽を、通常の10倍以上の耐硫酸性をもつコンクリートで補修し、防食被覆を用いずに、50年を超えるメンテナンスフリーを実現した。将来の維持費の削減と中断のない水処理の提供に貢献した。 |
⑨ センシングデータを用いたブロック塀の点検評価技術の開発と防災減災への実践 (取り組み主体者:摂南大学 塚田義典、関西大学 梅原喜政・ 田中成典、徳島大学 上月康則、(株)日本インシーク 飯田章・平野順俊・下鳴恒彰) 官(徳島県)、学(摂南大学、関西大学、徳島大学)、産(日本インシーク)の協力体制のもと、センシングデータを用いたブロック塀の点検評価技術とブロック塀等の安全問題を対象とした世界初の防災教材を開発した。 |
⑩ 土木遺産「大宮橋」の修復工法及び損傷程度と補強効果の定量評価技術 (取り組み主体者:西条市) 土木遺産という歴史的・文化財的価値への配慮が必要な中、補強効果のある新技術(IPH工法)と、効果を定量的に評価するための非破壊試験(愛媛大学実施)を組み合わせることで修繕を成立させた。 |
インフラメンテナンス エキスパート賞/ インフラメンテナンス マイスター賞
インフラメンテナンス エキスパート賞
応募いただいた方の中から、独自の技能・技術を駆使することにより、特にインフラメンテナンスの発展に貢献がある、あるいは、長年にわたる事業実施、研究または技術開発等の活動を通してインフラメンテナンスの発展に貢献があったと認められる個人または団体を選考し、以下の通り、「インフラメンテナンス エキスパート賞」「 インフラメンテナンス マイスター賞 」として表彰することとした。
① 植野 芳彦 富山市にて、インフラマネジメントの構築を8年間にわたり実施。管理体制の構築、新た技術・新手法の導入。他機関との協力体制の構築、職員の技術力向上とマネジメント思考醸成のために「植野塾」を60回以上開催。 |
② 松永 昭吾 橋の町医者として点検、診断、補修補強設計、補修材料・工法開発を担うかたわら、国内外の技術者教育、再教育にかかわる。また、子ども向け工事体験イベント、土木遺産、産業遺産、災害遺産の保存活動を行っている。 |
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③ 塚田 啓二 鋼構造物に対して、高感度磁気計測とスペクトル解析方法を駆使して、目視が困難な腐食や疲労損傷の検出を可能にし、鋼構造のメンテナンスに大いに貢献される成果を挙げられた。 |
④ 木下 義昭 『橋梁補修DIY』をはじめとする最前線の実務に対する取組みをボトムアップで構築している。地方自治体職員の実務者目線に基づく、現場ならではの課題抽出と解決に尽力するとともに、職員の現場力の向上に努めている。 |
インフラメンテナンス マイスター賞
① 阿部 允 主にJR各社の鋼鉄道橋維持管理手法の提案、技術基準策定に取り組み、オリジナル「橋守カルテ」による技術普及やNPO法人「橋守支援センター」におけるメンテナンス技術者の育成に貢献した。 |
② 羽子岡 爾朗 (株)横河ブリッジホールディングスのグループ会社における50年を超える業務経験の中で,新設橋梁から既設橋梁の調査・設計の他,報文投稿,学協会活動,大学等の非常勤講師をされてきています。 |
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③ 出口 正義 『震災資料保管庫』において、被災経験や阪神高速道路の復旧に携わった経験を震災資料保管庫の来館者にわかりやすく説明する『語り部』を務められ、被災、復旧経験の伝承活動に長く尽力されました。 |
インフラメンテナンス 特別賞
① 震災資料保管庫 |
② ショーボンド建設 補修工学研究所 |
インフラメンテナンス 優秀論文賞
インフラメンテナンス実践研究論文集は、インフラのメンテナンスを実践した国内外の事例を集め、広く公表、周知することを目的としている。すなわち、メンテナンスの現場で具体的に実践された手法や取り入れられた仕組みに創意工夫がみられ、今後のインフラメンテナンスの技術の進展や実務上の展開が期待される有用な論文を募集した。
また、論文の査読及び表彰論文の選考にあたっては、実践的な内容で実装による効果や将来性の進展が期待できる論文、特色のある内容で将来の進展につながる考察がなされた論文を重視した。
以上のことから、登載される論文は、いずれも社会で取り組まれた実践的な活動内容であり、将来の進展が期待される研究であることから、今回、その実践研究論文の中から、特に優秀と認められる論文を選考し、「優秀論文賞」として表彰することとした。
①港湾構造物の目視調査への水中ドローンの活用に関する検討 |
② 損傷した床版上面を補修・補強する技術 PCM舗装の開発 |
③ インフラメンテナンス時代の 橋梁用伸縮装置の選定における考察 (富山市モデル) |
④ 次世代の橋梁長寿命化修繕計画の実践-大田区での取り組み事例- |
⑤ 技術者の評価に基づいた地下・トンネル構造物の維持管理戦略の検討と制度の構築 |
⑥ コンクリート道路橋の点検省力化に向けた変状領域の自動抽出 |
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